JavaScript is required. Please enable it to continue.
Your browser lacks required capabilities. Please upgrade it or switch to another to continue.
Loading…
<img src="../../image/lonecrywolf/short/001.jpg"> 毎週金曜日の最後の授業は、LHR。 LHRとは、ロングホームルームの略で、その名の通り長いホームルームだ。 通常のHRは、朝に出席確認、授業後に連絡事項を述べるだけで、五分もない。 LHRは、担任が、専門科目教師の面を見せず、受け持つクラスの学生と交流する時間である。 なお、“交流する時間”と言えど、これはれっきとした授業だ。 先生 「今日から五月だねぇ」 授業前の挨拶を済ませた後、うちのクラスの担任がそう切り出した。 先生 「卒業学年は、あっという間だよ。そしてこれが、最後の学生生活になる人も多いよね」 先生 「そんなキミたちに、一つ課題があるよ」 先生は、黒板に文字を書いた。 “卒業制作” 先生 「四、五人のグループを作って、そのグループで一つの作品を完成させてほしい」 先生 「作品の形式、規模は問わないけど、グループらしい作品でなかったり、三月までに完成させられなかったりしたら……」 先生 「……まぁ、お察しだね」 えぇー! と、飛び交うブーイング。先生はそれをなだめて、続けた。 先生 「大丈夫大丈夫。ちゃんと完成させればいいんだから」 先生 「でも、作る作品の完成図というか、どういうものを作るのか。その草案は事前提出が必要ね」 先生 「今日はグループ作りをやってもらう」 先生 「そして、完成図の提出は今月中」 先生 「“今月中提出”といっても、5月31日に出しゃあーいいってもんじゃあないからね」 先生 「先生から許可をもらわないと、取りかかってはいけない」 先生 「つまり……、今月中に、完成図を作成し、許可をもらうことが必要です」 先生 「まぁまずはグループ作り。グループ作りは今日やって、今日教えてね」 先生 「グループの作り方は任せるけど、余りが出たらこっちで決めるから、そのつもりで」 先生 「じゃ、どうする委員長?」 委員長 「えぇー……、くじ引きする?」 「それじゃ先生が決めるのと同じじゃん!」 委員長 「それもそーか。じゃあ、まず各自決めてみてくれー」 みんな席を立つ。私も席を立った。 [[→->002_友達]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/002.jpg"> 友子 「詩由ちゃん、一緒にやろ」 詩由 「おー、いいよいいよー!」 「詩由ー、私らんとこ入れよー」 詩由 「おけおけー!」 「せんせー! グループって最大五人?」 先生 「“最低”四人かな。最大は……、まぁ、他のグループとあまりにも差異がなければ~」 「じゃあクラスみんなで一グループにすればよくね?」 先生 「それはだめ」 「えー」 「男女比とかも考慮しなくちゃだめー?」 先生 「んー、その辺は特には。あんまり言ってもセクハラになりそうだしねぇ」 わいわい盛り上がる教室内。私は、辺りを見渡した。 奏 「ね、俺と一緒にやろっか?」 奏 「……いいでしょ? よし、けって~」 奏 「あ、ねぇねぇ、大神くんもおいでよ」 私は、ふと気になる声が聞こえて、そちらに目を向けた。 [[→->003_三人]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/003_a.jpg"> 月島くんと大神くんと木野くんだ。 一 「入れてくれるのはありがたいけど、最低四人らしいな……」 奏 「困ったねー」 月島くんは、セリフとは裏腹に全く困っていなさそうだ。そして大神くんも、どこ吹く風という言い方だ。 奏 「木野くん友達いるー? え? 俺だって? うれしーなーもー」 月島くんは、座っている木野くんにぎゅーっと抱きついているが、対する木野くんは、無反応に思えた。 一 「友達なんていないな」 奏 「大神くんも友達だよぉ。ね?」 一 「……どうも」 ――彼らは、このクラスの“余り”だと思う。 月島奏くん。彼は、嘘つきだ。他愛もないことから重要なことまで、開いた口から真実がこぼれたことはあるのか。そんな彼に、好き好んで近づく人はいない。 大神一くん。彼は、とてつもないクールだ。人付き合いなんて無駄でしかない。態度がそう語っている。それがかっこいいと一部にファンがいるようだが、あまりにも群れを好まない一匹狼なので、同級生には敬遠されている。 木野環くん。彼は、無口だ。あまり人と話すのが得意でないのか、よく下を向いている。何か話しかけても、これといった反応もないため、扱いに困る人といったイメージだろうか。 ………………。 [[→->003_入れて]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/003_b.jpg"> 詩由 「ねえ……」 気づけば私は、話しかけていた。その三人に。 詩由 「私も入れて。あなたたちのグループに」 ざわっ。――空気が変わった気がした。 [[→->003_反応]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/004.jpg"> 友子 「詩由ちゃん、その人たちと親しくないでしょ?」 詩由 「うん」 友子 「なら……」 詩由 「親しくないからこそ、こういう機会で親しくなりたいじゃん?」 奏 「あー……。俺地獄耳だからぁ、聞こえてるんだけど?」 友子ちゃんは、びくっと身を縮ませた。あたしはふっと笑って、友子ちゃんに言う。 詩由 「嫌だったら、友子ちゃんは別のグループに入るといいよ。誰と組みたい? 私が言ってあげる」 友子 「わっ、私は。詩由ちゃんと組みたいの……」 詩由 「じゃあ、一緒にやる?」 奏 「そうそ~、歓迎するよ?」 友子 「…………」 友子ちゃんは、私に寄り添い、頷いた。 [[→->005_グループ結成]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/005_b.jpg"> 奏 「リーダー誰やるぅ? 俺でもいいよ~?」 一 「じゃあ、月島くんで」 詩由 「いやいやちょっと待ってちょっと待って」 奏 「あ、神光さんやりたいの~? しょーがないなあ、別にいいよ~」 一 「じゃあ、神光さんで」 詩由 「いやだからちょっと待ってって」 詩由 「リーダーって、他の四人を率いるんだよ? できるの?」 奏 「じゃあ、神光さんで?」 詩由 「だからぁ……。こういうのは、もっとしっかり決めた方がいいんじゃない?」 しかし、月島くんがリーダーなのは不安があるな。リーダーは、他のメンバーより、先生と関わる機会も多いはずだ。嘘つきと悪名高い月島くんだもの。通達ミス等あってはいけない。 [[→->005_リーダーどう?]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/001.jpg"> 紙にグループメンバーを書き、先生へ提出する。 先生 「うんうん、全員無事グループが決まったね」 先生 「じゃあ、もういい時間だし、今日は終わろうか」 先生 「明日からゴールデンウィークだけど……」 先生 「遊び呆けたり、部活やバイトに明け暮れたりすると、あとで後悔するかも~?」 先生 「今日も別にここに残って話しててくれて構わないから」 先生 「ゴールデンウィークの予定も決めつつ、各自解散してくださいね」 先生 「毎年、五月後半になると泣くグループ続出だからね~。事前のスケジュールはきちんと立てなね」 先生 「先生も一応いるから、何かあったら聞いていいよ」 ゴールデンウィークの予定かぁ……。 再びざわつき出す教室。 先生からうちのグループに視線を戻すと、そこには驚くべき光景が広がっていた。 [[→->006_帰り支度]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/006_a.jpg"> 詩由 「ちょちょちょちょっと! なに帰ろうとしてんの!」 なんと、大神くんと月島くんは、早々と帰り支度をしていたのだ。 [[→->006_待ってよ]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/005_f.jpg"> 私は、とりあえずもう一度二人を座らせる。 詩由 「グループ制作なんだから、ある程度協力的になってください!」 奏 「十分協力してない?」 詩由 「まだ始まったばっかじゃないの! 一時間も経ってませんよ!」 一 「ゴールデンウィーク明けのLHRで、それぞれの意見出し合えばいいんじゃ?」 詩由 「それ一週間後よ? さすがに先延ばしにしすぎだって。せっかく黄金週間があるってのに、それをみすみす無駄にするのはもったいない!」 一 「無駄にするつもりはないよ。制作物についてちゃんと考えとく」 詩由 「考えたら、即共有すべき! でしょ!」 私は、携帯電話を取り出した。 詩由 「まずは連絡先の交換しましょう! グループ作るから……」 [[→->連絡先の交換をしたい]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/007_a.jpg"> 数分経って。 詩由 「ようやく準備万端! 送信も受信もいつでもおっけー!」 なんとか赤外線通信についてマスターできた。 詩由 「じゃあ、木野くんの……、まずはもらおうか?」 木野くんも、どうやら赤外線通信の準備ができたらしい。頷いた。 赤外線通信受信……と。 赤外線のポートを相手のポートと合わせろと出てきた。 詩由 「じゃあ、やろう……」 [[→->008_赤外線通信]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/008.jpg"> 木野くんの携帯電話と、私の携帯電話をくっつける。 赤外線のポートを通って、木野くんのデータが送られてくる……。 詩由 「それじゃー、私も渡すね」 それにしても。 アプリとかは、こんなに近づかなくても、通信できるのに。 便利か不便かで言えばもちろん不便だが、あえてその不便なやり方で相手と繋がる……って。 なんだか、仲良しの証拠に思えるのは、自惚れだろうか。 ……いや! 今は確かに自惚れだけど、これから私は、木野くんと仲良くなるのだ。 木野くんだけじゃない。月島くんとも、大神くんとも……。 友子ちゃんのように、仲良くなって卒業するんだ! [[→->009_赤外線通信終了]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/009_a.jpg"> 詩由 「よし、できたね」 友子 「そういえば、一回受け取れば、あとはメール添付でいいかも……」 詩由 「あ、そーか! じゃあ、テストも兼ねて、友子ちゃんの連絡先は、メールで木野くんに渡そうか!」 友子 「……じゃ、詩由ちゃん。メッセで私のメアド送ったよ」 そういえば、友子ちゃんとは連絡が取れるが、それはアプリ上であって、メールアドレスや電話番号は知らなかったな。 アプリを見ると、確かに友子ちゃんから、自分のメールアドレスを綴ったメッセージが届いていた。電話番号は書いていなかったが、メールができるなら、必要ないか。一応、アプリ経由で電話できるし。 友子ちゃんのメールアドレスをアドレス帳に登録し、それを添付したメールを木野くん宛てに送る。 “このメールにつけたのが、達野友子ちゃんのメアドね! 私(神光詩由)共々よろしくね~ヾ(≧▽≦)ノ これから一緒にがんばってこ!” 詩由 「届いたー?」 [[→->009_届いた]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/005_o.jpg"> リーダーが仲間を信じなくてどうする……。 詩由 「じゃあ私、ちょっと先生に聞いてくる……けど」 詩由 「すぐ済むから、勝手に帰らないこと! いいね!」 びしっと、大神くんと月島くんに言う。 詩由 「返事は!?」 奏 「勝手に帰るわけないじゃ~ん」 一 「…………」 詩由 「大神くんは?」 一 「……わかりました」 詩由 「よぅし。じゃあ、友子ちゃんと木野くんは、二人が帰らないように見張っておいてね」 友子 「ぇう……」 友子ちゃんと木野くんは、少し困った顔をしていた。 まぁ、月島くんと大神くんは、勝手に帰らないと言ってくれたし、大丈夫……のはず。 詩由 「………………」 信用するんだ、私! 詩由 「じゃあ、行ってくる」 奏 「はいはい、いってらっしゃい」 [[→->a001_先生のもとへ]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/005_n.jpg"> 大神くんと遊べるのは、今日を逃したら、もうゴールデンウィーク明けまでないかもしれない。 月島くんの連絡先くらい、本人に聞けばいい。本人も一緒にファミレスに行くんだから。 であるなら……。 詩由 「ゆくぞおおお、ファミレスへ!」 私は、自分のかばんを持ち上げ、宣言した。 [[→->b001_ファミレスへ]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/a001_a.jpg"> と言っても、先生は教室内にいるわけだが……。 先生を見ると、私はぎょっとした。 先生がいる教卓の近くには、思っていた以上に人がいたのだ。 みんな結構真面目だなぁ。 [[→->a001_先生に近づく]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/a001_b.jpg"> 「ちょっと詩由~、順番無視やめろし~」 詩由 「いやそういうわけでなく、ちょっと急ぎで先生に聞きたいことが」 先生 「ん?」 詩由 「月島くんの連絡先教えてください!」 [[→->a001_先生に尋ねる]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/005_p.jpg"> 友子 「あ、詩由ちゃん……」 席に戻ると、四人は変わらず座って待ってくれていた。 詩由 「ええと……、先生の手が空くまで……」 友子 「教えてもらえなかったの……?」 友子ちゃんの質問には、頷くしかできない。 奏 「聞くだけ無駄だよぉ」 あんたが言うな。 詩由 「もうしょうがない! 私は、月島くんの連絡先、絶対聞くから。でも、この盛況ぶりではね……」 詩由 「私は残る。みんなは帰っていいよ」 詩由 「ただ、何作るかーとか、ちゃんと考えとくんだよ! わかったね!」 詩由 「友子ちゃんと木野くんは、気軽にメールしてくれて構わないからね」 詩由 「じゃ、解散!」 奏 「は~い、了解、おつかれさま~」 [[→->解散]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/002.jpg"> うちのグループの男性陣は、帰っていった。大神くんなんて本当に早い。 詩由 「友子ちゃんも帰っていいよ?」 友子 「い、いいよ……。詩由ちゃん待ってる」 詩由 「ありがと~、心の友よ!」 詩由 「ただ待つだけなのもなんだし、卒業制作について話そか」 友子 「うん……!」 [[→->a002_数十分後]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/a002.jpg"> 先生 「神光さん、お待たせ」 友子ちゃんとあれやこれや話していたら、いつの間にか陽が傾いていた。 周囲を見回すと、うちの男性陣を帰した時よりずっとクラスメートは減っており、残っていた数人も、帰り支度をしていた。 先生 「帰る準備したら職員室においで」 詩由 「あ、はい! 友子ちゃん、行こう」 友子 「う、うん」 [[→->a003_職員室へ]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/a003.jpg"> 先生 「はい、月島くんのお家の電話番号」 先生は、小さなメモ用紙に電話番号を書いて、渡してくれた。 先生 「さっきも言った通り、学生の個人情報を教えるわけにはいかないんだけど……」 先生 「まぁ、グループリーダーには、“もしも”のことも考えて、教えておいてもいい……でしょう」 先生 「月島くんの携帯電話番号や、そもそも持ってるかどうかは、先生も知らないけど……」 先生 「とりあえず、お家のね」 詩由 「ありがとうございます!」 先生 「当たり前だけど、悪用はしないように」 詩由 「はい!」 結局、みんなとファミレスに行くことはできなかったけれど……。 みんなの連絡先は、こうして手に入ったんだし。私も節約できたし。よしとするか。 先生 「神光さん」 詩由 「はい」 先生 「みんなをよろしくね」 『任せてください!』と言おうとしたら、急に後ろから誰かに抱きつかれた。 [[→->a004_抱きつかれた!]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/a004.jpg"> 詩由 「ひやあああっ?」 奏 「せんせ~、教えちゃったの?」 詩由 「つ、月島くんっ?」 抱きついてきたのは、月島くんだった。 詩由 「帰ったんじゃ……」 奏 「帰ったけど、ワープしてきたの」 詩由 「嘘でしょ」 先生 「月島くん、あまり人をからかわないように」 奏 「だって……」 [[→->a005_だって?]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/a005.jpg"> 月島くんは、私を抱きしめる腕にぐっと力を入れ、耳元でささやくように告げる。 奏 「神光さんが好きだから、からかいたくなっちゃうの」 軽い調子の声色が、重い低音に変化する。俗に言う“イケボ”だ。 [[→->a006_うそつき]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/a006_a.jpg"> 詩由 「…………うそつき」 さすがに照れてしまう。月島くんは、ぱっと私を解放し、友子ちゃんとは逆の隣に並んだ。 奏 「ほんとだよ? 最初から好感度MAXだもん」 [[→->好感度MAX]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/a006_c.jpg"> 詩由 「出てるわけないでしょ」 奏 「つれないな~」 先生 「まぁ、仲良くやるのが一番だよ。卒業制作終了時には、だいたいのグループが仲ぎっすぎすになるから」 詩由 「そんなことありえません」 奏 「そうそ~、ありえないありえない」 月島くんが言うと、先生の言葉を否定できない気がするなぁ……。 でも、仲がぎすぎす……なんて、そんなことさせるもんか。 私は、私たちは、この卒業制作をきっかけに、仲良くなるんだ。 卒業制作が終わる頃は、にこにこし合えるように! [[→->a007_下校]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/a007_a.jpg"> 先生にさようならを言って、私は、なりゆきで友子ちゃんと月島くんと帰ることになった。 詩由 「ねぇ、私のケータイから月島くんの家に電話かけるけど、私のケータイ番号教えといた方がいい?」 奏 「ん? 別にいらないよ」 詩由 「そう?」 奏 「だってどうせ出ないから……」 詩由 「こら待て」 詩由 「ちゃんと出て! 今日の夜かけるから!」 奏 「え~」 これは、大神くん同様、住所を知る必要があるだろうか? しかし、普通に聞いても嘘をつかれそうだし、かといって今からストーカーするわけにもいかないし……。 奏 「んじゃ、ばいばい」 [[→->a007_ばいばい]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/a007_b.jpg"> 月島くんは、唐突に足を止めると、曲がり角を曲がっていった。 詩由 「んー、大丈夫かなあ……」 友子 「…………詩由ちゃん」 詩由 「なーに?」 友子 「ほんとに、月島くんや……、大神くんや木野くんと。仲良く……できるのかな」 詩由 「友子ちゃんは、その三人嫌いだったりする?」 友子 「う、ううん。別に嫌いってことはないよ」 友子 「ただ……、三人とも、なんか……」 友子 「みんなに、避けられてる……っていうか、みんなに、えっと……、嫌われて、ない……?」 友子ちゃんは、おそるおそるといった様子で、私に尋ねた。 嫌われている、か……。 詩由 「ん~…………」 詩由 「“みんな”にとってはそうかもしんないけど、私は……、まだ好きとか嫌いとか思えるほど、三人のことよく知らないし」 詩由 「だから、知りたいなって。人には悪いとこも、いいとこもあるもんでしょ? 私は、彼らのいいとこ、まだわかってないから。知って、好きになりたいなって」 詩由 「そのうちに、絶対仲良くなれると思うし!」 詩由 「……変かな?」 友子 「……ううん」 友子 「詩由ちゃんの考え方、素敵だと思うよ」 詩由 「よかった」 友子 「私も、と……隣にいて安心できるのって、詩由ちゃんくらいしかいないから」 友子 「私も、仲良くできたら……いいな」 詩由 「できるよ~!」 詩由 「仲良くなりすぎちゃって、あの三人の誰かが、友子ちゃんの恋人になっちゃうかもね?」 友子 「なっ! そ、それはないでしょ~……」 声を上げて笑う。 友子 「でも、恋人かぁ……」 詩由 「気になる人いる?」 友子 「今は全然……。私に恋人なんてできるのかな~……」 詩由 「友子ちゃんかわいいし、その気になれば余裕だって!」 友子 「あはは……」 友子 「詩由ちゃんこそどうなの?」 詩由 「私も、色恋とは無縁だからね~。ま、そのうち身をこがすような大恋愛が訪れるでしょ!」 友子 「“恋愛”って、“訪れる”もんなのかな~……?」 [[→->帰宅]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/c001_e.jpg"> 詩由 「さて」 家に帰ってきたけれど、月島くんは帰っているだろうか。 詩由 「………………」 とりあえず、先生からもらった月島くんの電話番号を、自分の携帯電話に登録する。 まだ帰っていないといけないし、もう少し後の方がいいかな。とはいえ、お家に電話するわけだから、あまり遅くなりすぎないようにしなくちゃ。 ご飯食べたら、かけてみよう。 [[→->食事後]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b001_a.jpg"> なんとか無事に五人全員ファミレスに辿り着けた。 道中も気が抜けなかった。大神くんと月島くんは、目を離したら逃げ出す可能性があったからだ。 最終的に、嫌がる二人を無視して手を繋いできたが……。 なんか……、園児を散歩させる保育士さんって、こんな感じなのかな。疲れてしまった。 店内は、空いている。おやつの時間は過ぎたが、かと言って夕食には早い時間だからだろう。 詩由 「おごりとは言っても、そんなに高いもの食べたり、いくつもいくつも注文しないでよ……。手持ちのお金なくなったら、その分払ってもらうからね」 一応釘を刺して、二つあるメニューのうちの一つを、隣にいる友子ちゃんと見る。 [[→->b001_メニューを見る]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b001_f.jpg"> 注文を済ませ、ドリンクバーでお好きなドリンクを持って、再び着席。 それにしても、皆さんお安いのを頼んでくれるおかげで、お財布にはそこまでダメージはない。予想よりは少ない出費で済んだ。 「お待たせしましたー」 [[→->b001_お待たせしました]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b003_f.jpg"> 大神くんに強要したのに、自分がやられたら拒否するのはよくない。 詩由 「あ、あーん……」 私は覚悟を決めて、月島くんに向かって口を開いた。 [[→->口を開く]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b003_f.jpg"> あーんしてもしなくても、もはやモンブランは一口分しかない。なら……。 [[→->なら]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b001_h.jpg"> 詩由 「じゃ、食べようか……」 友子 「う、うん……」 私はチーズケーキを、友子ちゃんはチョコレートケーキを、木野くんはイチゴショートケーキを食べ始める。大神くんのハンバーグはまだだが、きっともうじき来るだろう。 とはいえ、大神くんは暇じゃないだろうか。何か話そう。 [[→->何か話す]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b001_x.jpg"> 結局、一度も話が弾まないまま、時間だけが過ぎていった。 夜の帳が下り始めてきたため、帰ることにする。 私のおごり。 [[→->おごった後]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/c001_a.jpg"> 詩由 「さて!」 早速月島くんに電話をかけてみることにする。 妙に胸が高鳴る。わあ、番号をプッシュするなんて久しぶり。 詩由 「2705……っと」 紙に書かれた番号と、画面に表示されている番号を見比べ、間違いがないことを確認し、電話をかける。 [[→->いざ電話をかける]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/c001_f.jpg"> 詩由 「よぉーし」 夕飯後、私は、月島奏くんのお宅へ、電話をかけてみた。 呼び出し音が鳴る……。 ガチャ 詩由 (早っ) ワンコール鳴ったか鳴らないかくらいで、向こうが受話器を取った。 詩由 「あ、あの」 『おかけになった電話番号は、現在使われておりません』 [[→->おかけになった電話番号は]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/c001_e.jpg"> 詩由 「……ふぅ」 確実に切れたことを確認したら、思わずため息が出てしまった。 月島くんと話していて疲れない……と言えば嘘だ。 いつか、電話を切るのが名残惜しくなるくらい、月島くんと仲良くなれるだろうか。 詩由 「…………よし」 『~だろうか?』じゃなくて、それを目指さなくっちゃね! [[→->メッセージ]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/c001_l.jpg"> 私は、友子ちゃんに、月島くんのことについてメッセージを送った。『月島くんらしいね』という返事が返ってきた。 詩由 「……………………」 友子ちゃんに送るなら、木野くんにも……。 とりあえず、当たり障りのないことを送ってみよう。ええと、メールメール。 “今日はありがとねー! もし何かあったら、気軽にメールくれて構わないし! 何でも話してね(★ゝω・)b⌒☆” 詩由 「……これでいいかな?」 送信してみる。 [[→->返信]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/c001_m.jpg"> 数分後、ケータイが鳴った。見れば、木野環くんからのメールだった。 “こちらこそありがとう。そう言ってくれて嬉しいよ” 詩由 「おお……」 社交辞令かもしれないが、感動してしまった。 木野くんがしゃべっているところって、思えば記憶にない。そんな木野くんから、こうしてテキストでもメッセージが届けられているということが、すごく感激してしまう。 詩由 「う、うーん……」 これは、押していいのかな? 押しちゃっていいのかな? 私としては、木野くんとたくさん話してみたいぞ、うん。 でも、社交辞令かもしれないし……。うざがられてもいけないだろうし……。 ど、どうしよう……? [[メールを送る]] [[メールを送らない]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/c001_n.jpg"> 詩由 「よし……!」 別に二通目送るくらい、どうってことはないだろう! 木野くんだって、面倒だったら返信しなくなるだろうし。 でも、何話そうかな。 今の気持ちを、率直に伝えてみようかな。う~ん、でも、それってめっちゃ高テンションでメールしちゃいそう。おとなしい木野くんのことだし、やっぱり社交辞令かもしれないし、一人だけ盛り上がるのもなぁ……。 詩由 「うう~ん……」 書いては消し、書いては消しを繰り返す。 “早速だけど、何か困ってることはないかな? あれば聞くよー?” 詩由 「……お、送ってみる、か……」 ないって言われたらそれまでだし。リーダーとしては無難なメッセージだよね。 送信。 [[→->メールが返ってくる]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/c002_a.jpg"> 私は、布団にもぐり込んだ。 携帯電話のカレンダーを起動する。 今日は、5月1日。金曜日だ。 明日は、5月2日。祝日ではないが、土曜日なので休みである。 5月3日は、憲法記念日。 5月4日は、みどりの日。 5月5日は、こどもの日。 5月6日は、普通なら何もないが……、5月3日の憲法記念日が日曜日であるため、振替休日である。 5月7日、木曜日が、ゴールデンウィーク明け初日。だから、一週間近く休みなのだ。 さて、この長い黄金週間を、どう活用しようか。 絶対絶対、グループになったメンバーと仲良くなってみせるんだから! [[→->END]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/c001_o.jpg"> 三十分くらい経つが、メールは来ない。 返信は来ないかなぁと思っていたのだが、トイレに行っていた間に来ていた。 “これと言ってはないけど… 卒業制作が不安かな” 詩由 「おお……」 会話ができている……! 当たり前のことなのに、私はまた感動した。 大急ぎで、私は返信する。 “そんなの私も同じだし、きっと友子ちゃんや他のメンバーも同じだよ! まだ始まったばかりだから、あせらず一緒にがんばろう!” 送信。 [[→->メールの返信]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/c001_p.jpg"> “そうだね。ありがとう。 俺、きっと迷惑をかけてしまうと思うけど、よろしくお願いします。” 詩由 「おおお……」 木野くんの一人称って“俺”なんだ。 すごくどうでもいいことのはずなのに、重要な情報を入手できた気がして、胸が高鳴る。 詩由 「…………」 しかし、どうしよう。話に一区切りついてしまった。 まだメールを送る? それとも、向こうも迷惑かもしれないし、もうやめとく? 時計を見ると、もはや十時を回っていた。 [[またメールを送る]] [[メールを送らない]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/c001_q.jpg"> いや、せっかくこうしてメールをしているんだ。もう少しくらいメールしたっていいじゃないか! 私は勝手に結論づけ、また返信を考える。 “そんなのお互い様だよ~ 私だってドジとかけっこーいっぱいしちゃうと思うし… そういう時は、木野くんがフォローしてくれるとタスカル!!” [[→->返事が来る]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/c001_s.jpg"> “ありがとう木野くん!! そう言ってくれると心強いよ!!!” 詩由 「…………」 送る前に、この一文も添えてみる。 “私、木野くんのこと知りたいな” 詩由 「送・信っ!」 [[→->メールを送って]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/003_c.jpg"> 奏 「あ、ほんとー? 助かる、ありがとー神光さん」 へらっと笑う月島くん。 「ちょっと詩由……! 私たちはどうなるの?」 詩由 「一緒に……」 「…………いや、悪いけど、私たちは私たちで別のグループ作るわ」 「そうね……」 友子 「ね、ねぇ詩由ちゃん……」 詩由 「ん?」 友子ちゃんが、こそっと小さな声で話しかけてくる。 [[→->004_こそこそ]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/005_a.jpg"> その後、グループ分けは無事終わった。といっても、私たちのグループには変化はない。月島くん、大神くん、木野くん、友子ちゃん、私の五人だ。 グループごとに固まって席につく。 先生 「じゃあ、グループメンバーを、紙に書いて教えにきて。リーダーも決めて」 先生の言葉を聞いた後、また教室内はざわめき出した。 [[→->005_リーダー]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/005_c.jpg"> 詩由 「大神くんはリーダーどうなの?」 一 「嫌」 ばっさり言われた。 [[→->005_リーダー?]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/005_d.jpg"> 詩由 「友子ちゃん……も嫌か」 名前を出した時点で、首をぶんぶん左右に振られた。 [[→->005_リーダーは]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/005_e.jpg"> 詩由 「木野くんは……」 木野くんはびくっと身を震わせると、何やらもごもご言っている。 奏 「『俺に任せとけ! 最高のチームにしてやるぜ!』……って言ってるよ」 詩由 「言ってないでしょ」 私は、ため息をついた。 詩由 「じゃあ私がリーダーやるね」 奏 「そんなにリーダーになりたかったんだね」 詩由 「そういうことでいいよ……。異論はない?」 誰も反論しなかったため、私がリーダーになった。 [[→->終了]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/006_b.jpg"> 奏 「僕ぅ、アルバイトの時間がぁ」 詩由 「いやいや、授業、いつもと比べたらかなり早く終わってるよね? なら、ほんとにバイトがあっても、まだ時間に余裕があるよね?」 一 「早く帰りたい」 詩由 「いやそんなストレートに本音言われたら、それはそれで困るから!」 [[→->席に座って]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/005_g.jpg"> 奏 「ケータイ持ってにゃーい」 詩由 「はぁ?」 一 「俺も持ってない」 詩由 「え……、うそ?」 一 「そんなことでうそつかない」 月島くんは、にやにや笑っているので、実は持っていても不思議ではないが、大神くんはまじで持っていなさそうだ。携帯電話がない……だと……。 詩由 「じゃあ……、連絡どうしよう」 一 「LHRで……」 詩由 「せめて『教室で』って言ってくれない? 週一授業でしか話さないのはいかんでしょ……」 詩由 「んー、とりあえず木野くんは持ってるよね? 交換しましょ」 [[→->007_連絡しよう]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/007_a.jpg"> 木野くんは、びくっと身震いしたが、かばんをまさぐり、おずおず携帯電話を出した。 いつも使っている通話アプリなら、グループでチャットもできるのだが……。三人なら、グループ作るまでもないか。 詩由 「じゃあ……」 [[→->007_携帯電話を差し出される]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/007_b.jpg"> 木野くんは、自分の携帯電話を差し出した。そこには、“木野環”と書かれた連絡先が映っている。電話番号もメールアドレスも、この携帯電話固有のものだ。 詩由 「何か通話アプリとかやってないの?」 尋ねると、木野くんは、こくこくと頷いた。 詩由 「そっか。じゃあ、これを交換しないとね……」 ………………どうやるんだっけ? 連絡は、みんなやっているアプリですることに慣れていた。そういえば、メールアドレスや電話番号を知っている相手って少ないし、知っていてもアプリで連絡することが多いな。 お互い携帯電話を持っているなら、手入力以外の簡単な方法があるはずなんだけど……。 詩由 「連絡先の交換って、どーやるんだっけ?」 奏 「え~、知らないのぉ?」 詩由 「しょ、しょうがないじゃん、アプリっ子なんだから……。木野くん教えて~」 [[→->教えて]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/005_h.jpg"> しかし、木野くんも困っている様子だ。何やら必死に携帯電話をいじっている。 詩由 「友子ちゃんはわかる?」 友子 「んーと……。赤外線通信とか? 送りたい連絡先のとこでメニュー開けば、送信出てこない?」 詩由 「……あ、出てきた! 赤外線ね」 友子 「赤外線なら、どの機種でも対応してる……かなあ。……私もあんまりこういうことしないから、不慣れで」 詩由 「…………これ、相手の受け取る場合はどうするの?」 友子 「なんか設定とかでそういうメニューない?」 詩由 「う~んと……」 [[→->数分経って]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/009_b.jpg"> 木野くんは、頷いた。 詩由 「じゃあ、念のため友子ちゃんにも木野くんメール送って~」 木野くんが手を動かす。 友子 「……届いたよ」 詩由 「よーし、これで連絡先の交換は終わったね!」 一 「じゃあさよなら」 詩由 「こらこらこら」 そそくさと帰ろうとする大神くんを制す。 [[→->010_こら待て]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/010_a.jpg"> 詩由 「私と友子ちゃんと木野くんはいいとして、大神くんと月島くんの連絡先は、また別途教えてもらう必要があるの」 一 「俺は、本当に携帯電話持ってないんだって……」 詩由 「別にケータイじゃなくてもいいよ。家の電話の番号教えて」 一 「ない」 詩由 「はぇ? じゃあ、先生からの連絡とかは何で受け取ってるの?」 一 「受け取ってない。どうしてもなら親に行くだろうけど」 詩由 「そうなの? まぁ言われてみれば、重要なことはHRなんかで言うしね……」 詩由 「そ、それじゃあ、お母様かお父様に、私の連絡先を……」 一 「実家に帰る予定はないから難しいな」 実家? 詩由 「あれ、大神くん一人暮らしなの?」 一 「うん」 詩由 「実家……ってどこ?」 一 「隣の県」 詩由 「遠いね」 一 「近くはないな」 詩由 「ここ県境近くないし、遠いでしょ。でも、じゃあ、親御さんとの連絡って?」 一 「手紙」 アナログだ……。 詩由 「一人暮らしだから、節約のためにケータイ持ってないの?」 一 「あー……、それも、なくはないかな」 詩由 「でもさ、緊急なことがあったらどうしてるの? 例えば、台風の日とか。去年そういえば台風で、朝休校が決定したことあったよね」 一 「…………登校したら、門が閉まってたな……」 詩由 「体当たりだねぇ……」 その時の大神くんの立場を考えると申し訳ないが、少し笑ってしまった。クールで近寄りがたくても、彼は人間。時には失敗したり、がむしゃらにぶつかったりすることもあるんだ。 一 「まぁ、なくてもなんとかなるもんだから」 詩由 「まぁ……、もともと携帯電話が浸透したのも、人類の長い歴史からしたら、最近のことだし……?」 詩由 「でも、連絡が取れないのは困るなぁ……」 少し考え……、私は思いついた。 詩由 「じゃあ、住所教えて!」 一 「文通だとお金も時間もかかるよ」 詩由 「心配ご無用。押しかけに行きます!」 [[→->010_目が点]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/010_b.jpg"> 大神くんのクールな顔が崩れた。目を真ん丸にしている。 一 「いや……、普通に困るって」 詩由 「しょうがないじゃん、連絡つかないのはさすがに困るしー」 詩由 「わざわざ一人暮らしするくらいなんだし、ここから遠くない場所に住んでるんでしょ?」 [[→->010_押すべし]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/010_c.jpg"> 一 「そりゃまぁ……そうだけど……」 詩由 「じゃあ、教えて」 一 「いや、プライバシー侵害じゃない?」 詩由 「別に悪用しないし!」 一 「嫌だよ、教えない」 詩由 「グループ制作が失敗に終わって、卒業できなくなってもいいの?」 一 「う……」 さすがに“卒業ができない”のは、大神くんにとっても困ることのようだ。 一 「ただ、ゴールデンウィークは朝から晩までバイトだから、家に来てもいないかもよ……」 詩由 「ケータイとかないのにバイトできるの?」 一 「……“私用”で使える携帯電話は持ってない。貸与されてる、仕事用だから」 奏 「じゃあ、神光さんがグループ制作用の携帯電話を貸与してあげたら~? ついでに俺にも」 一 「絶対いらない」 月島くんにツッコむ前に、即座に拒否された。もともと携帯電話の貸与なんて不可能だが、あまりにもすぐさまきっぱり拒絶されると、それはそれで悲しくなる。 詩由 「事情はわかったよ。それでもいいから、念のため教えて」 詩由 「私も、答えはわからなくても、体当たりしていくし」 詩由 「台風の時の大神くんみたいに、ね」 奏 「じゃあ今度台風とかでいきなり休校になったら、神光さんが大神くんの家に連絡しに行くんだね」 詩由 「いやそれは多分電車も止まってるんで……。それは申し訳ないけど連絡できなさそうです……」 一 「………………わかったよ」 大神くんは、半ば諦めた様子で、住所を教えてくれた。 一 「じゃあ、もう帰っていい?」 詩由 「まだだめだって! 残るは……」 [[→->011_残るは]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/011.jpg"> 私は、月島くんを見据えた。 詩由 「さあ! 連絡先を教えてもらいますよ!」 奏 「だからぁ、僕も大神くんと一緒で、携帯電話持ってないの。住所も不定でね」 詩由 「んなわけあるかい!」 奏 「ほんとだーって~」 私は、ため息をついた。 詩由 「わかったよ」 奏 「うん~」 詩由 「先生に聞くわ」 奏 「え~」 しかし、今先生に聞くとなると、このメンバーたちから目を離さないといけない。その隙に大神くんや月島くんが逃げる可能性がある。それは避けたい。 先生は逃げていかないから、月島くんの連絡先については、後でいい。 詩由 「では、ゴールデンウィーク前に、肝心のこと決めていきましょ」 詩由 「まず、この卒業制作で、作りたいものとか、現時点である人いる?」 [[→->とりあえず聞く]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/005_i.jpg"> し~ん。……うん、わかってた。 詩由 「私も今日初めて聞いた話だし、それについて語れることはない……」 詩由 「でも、何か思いついたら、遠慮なく私に言ってきてほしい!」 奏 「ケータイ持ってないんですけどぉ」 詩由 「……とりあえず、友子ちゃんと木野くんだけでも! おっけ?」 友子 「う、うん、わかった」 詩由 「そして、ゴールデンウィークの予定を聞いておきたいな」 [[→->予定を尋ねる]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/010_a.jpg"> 詩由 「大神くんは、ゴールデンウィークは毎日一日中バイトなの?」 一 「うん……」 詩由 「わかった、何かあれば手紙をポストに入れておくから、読んでね!」 一 「え……、あ、わかった……」 詩由 「返信の手紙くれたら嬉しいけど」 一 「え……。神光さんの家に行けと?」 詩由 「いやいやそれは申し訳ないから、大神くんの家の近くでいいよ。なんか手紙置ける場所とかあれば……」 一 「んなとこあるかな……」 [[→->さらに予定を尋ねる]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/005_j.jpg"> 詩由 「まぁ大神くんはそんな感じで! 友子ちゃんはどう?」 友子 「え、私? これといって予定はないはずだけど……」 詩由 「木野くんは? 予定ある?」 木野くんは、首を横に振った。特に予定はなさそうだ。 [[→->予定を尋ねない]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/011.jpg"> 奏 「俺はねぇ……」 詩由 「月島くんには聞いてない」 奏 「えー、以心伝心?」 詩由 「いや……、まぁ、言わなくてもわかる」 奏 「そうなん?」 月島くんのことだから、スケジュールを聞いてもどうせ嘘だろう。なら、聞いても聞かなくても同じだ。 そして、さっきから周囲のグループの話が聞こえるのだが……。 [[→->親睦会]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/005_k.jpg"> 詩由 「私と友子ちゃんはともかくさ……、私たちって、大して仲良くないと思うの」 奏 「え~、俺と木野くんはマブダチだよぉ」 『嘘つけ』と言いたくなったが、それはそれで失礼な気もして、スルーする。 詩由 「だから、親睦会しようよ」 [[→->親睦会しよう]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/010_b.jpg"> 周囲のグループからは、『とりあえずカラオケでも行こうぜ』とか、『ボウリングしながら話し合おう』とかいう話が聞こえるのだ。 確かに遊びながら仲良くなれば、グループ制作も捗るのではないだろうか。 一 「俺はバイトが……」 詩由 「じゃあ、夜とか! 一人暮らしでしょ? みんなで大神くんの家にお邪魔させてもらって……」 一 「絶対嫌」 詩由 「まぁそれは冗談だけど、どっかで夜ご飯一緒に食べるとかさ」 一 「仮病で休んでいい?」 詩由 「大神くんはもーちょっと嘘つく努力しなよ!」 奏 「俺はホストのバイトやってるから、夜は無理だなあ~」 詩由 「あーはいはい」 [[→->流して]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/010_a.jpg"> 詩由 「っていうか、大神くん、今日はバイトは?」 一 「基本的には、土日祝だけ……だけど」 詩由 「あ、じゃあ、今日親睦会やろう、うん!」 一 「……えっ……と…………」 奏 「大神くん、今日は男の子の日なんだってさ」 一 「……そう、男の子の日……」 詩由 「男の子の日って何……」 奏 「そんなの、女の子に言えるわけないじゃん」 なるほど、今日は空いているようだ。 [[→->確認]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/005_l.jpg"> 詩由 「木野くんは大丈夫?」 木野くんは、びくっとして、何やらもごもご言っている。 奏 「大丈夫だって」 詩由 「よぅし! 友子ちゃんは?」 友子 「えっ? ……だ、大丈夫……だけど」 詩由 「じゃあ、まずは仲良くなりに行こう!」 友子 「で、でも私、大したお金持ってないよ?」 奏 「僕もお金持ってないな~」 そうか! お金の問題があったか! ………………。 私は、自分の財布を確認した。月始めだから、お小遣いもらったんだったな。 詩由 「……よし! 今日は無礼講じゃ! 私がおごるぞー!!」 「まじ? 神光おごってくれんの?」 詩由 「えーい寄るな外野あ! 私がリーダーのグループだけじゃあ!」 「えー、じゃあ神光のグループと合併して、神光にリーダーになってもらいたいな~」 詩由 「むしろ今度おごってよ~」 「はっはは、また今度な~」 詩由 「あ、もう帰んの?」 「続きは歌いながら!」 「ま、なんとかなるよな~」 クラスの中でもお気楽な男子グループは、去っていった。 カラオケなら、そこまで高くはならないかな。 [[→->カラオケ]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/005_m.jpg"> 詩由 「じゃあ、私たちもカラオケ行こうか」 友子 「えっ」 一 「カラオケ……」 すごく微妙な空気が流れる。ひょっとしてこのグループ内でカラオケが好きなのは私だけか? 詩由 「じゃあ、ボウリングでも……」 全然空気が変わらない。 じゃあ……。 [[→->行きたい場所]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/005_n.jpg"> 詩由 「むしろ行きたいとこある?」 一 「家」 詩由 「じゃあ、お金もかからないし、大神くんの家に!」 一 「いやごめんなさい。ファミレスとか?」 詩由 「お」 ファミレスなら、ドリンクバーでねばることができる。それに、歌ったり体を動かしたりする必要もないから、無難だと思う。 詩由 「いいじゃんファミレス! んじゃ、早速行こっか」 友子 「あ、詩由ちゃん……、いいの?」 詩由 「大丈夫だよ、みんながステーキとか食べなきゃおごれるはず」 友子 「そ、そうじゃなくてさ」 友子 「月島くんの連絡先。先生に聞くんじゃなかったの?」 詩由 「……あ」 そうだった。 最初は、今日は予定を立てて解散するつもりだった。解散後にのんびり先生から月島くんの連絡先を聞こうとした。 詩由 「………………」 ファミレスに行けば、ここには戻れない。ならば、行く前に先生への用事を済ませるのが筋だが……。 [[→->012_逃げそうな二人]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/012.jpg"> 奏 「……?」 一 「…………」 この二人、目を離したら逃げそうなんだよなぁ……。 月島くんは、まだ先生から確実な連絡先を聞き出せるとして。大神くんは、今を逃したらゴールデンウィーク明けまで会えなくなるかもしれない。とはいえ、ファミレスに行くなら、月島くんの連絡先は入手できるかどうか……。 私が先生から情報を聞き出している間、友子ちゃんや木野くんに二人を見張ってもらえるならいいんだけど……。二人とも押しが弱そうだし、多分逃げられちゃうだろうな。 いっそみんなで先生に月島くんの連絡先を聞きに……って、本人がいるとややこしくなりそうだもんなぁ。 う~ん……。 ……どうしよう? [[先生に月島くんの連絡先を聞く]] [[ファミレスに行く]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/a001_c.jpg"> 先生 「あぁ……」 月島くんの素行は、すでにみんなわかっている。そのせいか、みんなに同情されるような目を向けられた。 先生 「さすがにね、学生の個人情報を渡すのはね……」 詩由 「でも、緊急事態だと思うんです!」 先生 「う~ん……」 先生 「ま、どっちにしろ今は無理、後で職員室に来て」 詩由 「…………後?」 先生 「とりあえず、みんなからの質問とかさばいた後ね」 教室内を見渡してみると、さっきの男子グループは去っていったが、それ以外はだいたい残っている。 この人たちが満足し、先生が解放されるまで、あと何十分……? [[→->席に戻る]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/a006_b.jpg"> 奏 「今だってほら、神光さんから見てこの辺に、“押し倒す”、“押し倒さない”って選択肢出てるだろうし」 [[押し倒す->a006_押し倒さない]] [[押し倒さない->a006_押し倒さない]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b001_b.jpg"> 詩由 「友子ちゃんどれ食べる?」 友子 「私にもおごってくれるの……?」 詩由 「そりゃとーぜん! ……だけど、あんまり高額なものは……」 友子 「ええっと……、ゴールデンウィーク明けでいいなら、その時払うね」 詩由 「高いものじゃなければいいって! 友子ちゃんだけ払ってもらってたら、三人も気にしちゃうじゃん」 あんまり気にしない人たちかもしれないが、友子ちゃんに気を使わせるのも筋違いなので、三人を理由に説得しておく。 友子 「詩由ちゃんはどうするの?」 ドリンクバーだけにするつもりだったが、お金の心配されたらだめだな。 詩由 「あ、このケーキセット……まだぎりいけるんじゃない?」 いくつかあるメニュー表の一つに、お昼過ぎから夕方までの時間限定で、ケーキとドリンクバーがついてお得なセットがあると書いてあった。時間も、今ならなんとか範囲内だ。 友子 「あ、いいねそれ。私もそれにしようかなぁ」 詩由 「私は、モンブランにしようかな」 友子 「私はチョコレートケーキで……」 私と友子ちゃんは決まった。 詩由 「そっちはどう?」 [[→->b001_メニューを決めて]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b001_c.jpg"> 一 「これとかいいの?」 大神くんが指さしたのは、ハンバーグセットだった。 詩由 「……いいよ!」 千円未満だしね! 税抜きで! 単品で! [[→->b001_他のメニュー]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b001_d.jpg"> 詩由 「木野くんと月島くんは?」 奏 「神光さんたちと同じでいいよ」 詩由 「私と友子ちゃんは、このケーキセットだけど……」 奏 「うん、それで」 詩由 「ケーキは?」 奏 「僕はセンスに任せる」 詩由 「ここ、店長の気まぐれ日替わりメニュー的なのはないけど」 月島くんは、ふっと吹き出した。 奏 「神光詩由の気まぐれ日替わりケーキ選択……でいいってこと」 詩由 「あー、どれでもいいってこと?」 [[→->b001_ケーキを選ぶ]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b001_e.jpg"> 詩由 「木野くんは?」 木野くんは、メニューを指さした。イチゴショートケーキだった。 詩由 「じゃあ、月島くんにはチーズケーキにするね」 [[→->b001_注文して]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b001_g.jpg"> ドリンクバーから帰ってきたタイミングで、四種のケーキが運ばれてきた。 大神くん以外の前にケーキが並ぶ。 大神くんが頼んだのはハンバーグだ。まだ時間がかかるだろう。 大神くんのも揃っていないためか、誰もケーキに手をつけない。五人もいるというのに、しーんとしている。 私は、はっと思いついた。 [[→->b002_思いついたこと]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b002_a.jpg"> 詩由 「大神くんは、コーヒー持ってきたの?」 一 「うん……」 詩由 「モンブラン好き?」 [[→->b002_モンブラン]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b002_b.jpg"> 一 「……きらい」 目が泳いでいる。大神くんは、月島くんと比べると、月とすっぽんなレベルで嘘が下手だ。……いや、この場合、どちらを月に例えればいいのやら。 まぁそれはともかく。おそらく、私の行動を予測してのことだろう。 私は、自分のモンブランを一口分フォークですくい、大神くんに差し出した。 [[→->b002_あーん]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b002_c.jpg"> 詩由 「あーん」 一 「いらない」 詩由 「ハンバーグ来るまで暇でしょ~? すぐは来ないだろーし」 一 「勘弁して」 詩由 「食べなって。美味しいよ?」 奏 「まだ食べてないくせに……」 詩由 「美味しいって、きっと」 友子 「詩由ちゃん……。せめてお皿に分けるとか……」 一 「やめ……」 詩由 「あ」 [[→->b003_あ]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b003_a.jpg"> べちゃ 私の手をやんわりと払おうとする大神くんの手に押され、私の手元が狂う。 フォークの先のモンブランが、大神くんの隣に座っていた月島くんの口元に当たった。 詩由 「ご、ごめん!」 私は、浮かせていた腰を下ろし、すぐさま謝る。 [[→->b003_反応]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b003_b.jpg"> 月島くんは、目を見開いた後、汚れた口元を指で拭い、舐めた。 奏 「…………」 わりとしゃべる方の月島くんが、黙っている。それに無表情だ。 さすがに怒らせちゃったかな。大神くんも友子ちゃんも木野くんもおとなしい子だし、フォローもない。 内心あわあわしていると、私の前にあるモンブランにフォークが伸びてきた。 あ、と思う間もなく、大きめの一口分をフォークはすくっていった。それが月島くんの口に収まる。 [[→->b003_モンブランの行方]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b003_c.jpg"> 奏 「慌ただしいなあ」 何回か咀嚼し飲み込んだ後、月島くんは笑って言った。いくら月島くんの言うことでも、これは嘘に思えない。本音のように感じた。 私は、恥ずかしいやら申し訳ないやら情けないやら。 詩由 「ごめんね……。月島くんも、大神くんも」 一 「あ、いや……」 一 「俺のもじきに来るだろうから……、気にせず食べてください……」 おとなしくそうさせていただくか。 私は、モンブランを見た。 [[→->b004_モンブランを見たはず]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b004_a.jpg"> しかし、お皿には、何も乗っていなかった。とはいえお皿は汚れており、モンブランが乗っていたことを物語っている。 おもむろに視線を上げる。 と……。 [[→->視線を上げた先]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b003_d.jpg"> 詩由 「ち……、ちょっとそれぇ!」 奏 「んえ?」 詩由 「私のモンブランじゃん!?」 月島くんが持っているフォークには、一口大くらいのモンブランが刺さっていた。 さっき取っていったのは知っていた。でも、それから食べ続けていたの!? [[→->食べられる?]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b003_e.jpg"> 月島くんは、へらっと笑った。 奏 「神光さんも食べたいんだね」 詩由 「食べたいっていうか、私の……!」 [[→->モンブランが]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b003_f.jpg"> 奏 「あーん」 月島くんが、今にも食べようとしていたモンブランを、こちらに突き出す。 う……。やられてわかる、自分が大神くんにしたこと。 色んな意味で恥ずかしくなる。 [[あーんする]] [[あーんしない]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b003_g.jpg"> 奏 「あー……」 月島くんが、モンブランを私の口元へ運ぶ……。 [[→->口へ]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b003_h.jpg"> 奏 「んっ」 詩由 「ん?」 私の唇の辺りまでモンブランが来たかと思いきや、モンブランはくるっと方向転換し、素早く口に入った。月島くんの、口に。 奏 「おいし。ごちそうさま」 口を開けたまま、月島くんがモンブランを食べるのをただ見ていた。 ………………。 詩由 「ちょっとぉ!!」 奏 「あっはは、ごめんごめん。代わりにこれあげるから」 [[→->これ]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b004_b.jpg"> 私は、月島くんの前にあるチーズケーキのお皿に手を伸ばした。 奏 「あー、とった~」 詩由 「それはこっちのセリフでしょ! 一個食べたようなものなんだから、こっちちょうだいよ!」 奏 「ちぇー」 月島くんは、フォークのモンブランをぱくっと食べる。そこまでチーズケーキに未練があるようには見えない。まぁ、もともと『どれでもいい』って話だったしね……。 [[→->チーズケーキを食べる]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b004_b.jpg"> 月島くんは、チーズケーキを差し出した。 けらけら笑う月島くん。 まぁ……、どうしてもモンブランが食べたかったわけじゃないから、いいんだけどね。チーズケーキも好きだし。 [[→->チーズケーキを食べる]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b001_i.jpg"> 詩由 「えーと、大神くんは、ハンバーグ好きなの?」 奏 「しゃべるか食べるかどっちかにしたら? お行儀悪いよ」 あんたが言う? とは思ったものの、そういえば無言でモンブラン食べられていたな。 [[→->チーズケーキを食べよう]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b004_c.jpg"> ゆっくり食べようかと思ったが、そういうことなら仕方ない。すぐ食べてやるとも! ぱくぱくとフォークを進める。 [[→->完食]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b004_d.jpg"> 最後の一口……。 詩由 「よし、ごちそうさま……!」 「お待たせしました、ハンバーグセットです」 食べ終えると、ハンバーグが来た。 「空いたお皿お下げしますね」 私と月島くんの前に出ているお皿が下げられる。 「ご注文は以上でよろしかったですか?」 詩由 「あ、はい……」 『ごゆっくりどうぞ』と、店員さんが去っていく。 ………………。 [[→->ハンバーグ到着]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b001_j.jpg"> 一 「えっと……、食べていい?」 詩由 「どうぞ……、お熱いうちに」 友子ちゃんや木野くんも、まだケーキを食べている。空いていそうなのは、月島くんだけだ。 あ、じゃあ……。 [[→->空いている人と話す]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b003_i.jpg"> 詩由 「お願いだから連絡先教えて。何かしら持ってるでしょ?」 奏 「もう、しつこいなあ」 詩由 「もー、それはこっちのセリフだよ……」 詩由 「ねー頼むよ。土下座したら教えてくれる?」 奏 「ここでしたら迷惑だよ」 なんで正論を言うんだ。 [[→->お願いする]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b003_j.jpg"> 奏 「そんなにほしいの?」 詩由 「ほしい!」 [[→->ほしい]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b003_k.jpg"> すると、月島くんは、テーブルに置いてあるアンケート用紙を一枚と、その傍らにあるボールペンを手に取った。 さらさら、ボールペンを走らせる。 [[→->ほしい?]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b003_l.jpg"> 奏 「ほしい?」 月島くんは、アンケート用紙をひらひらさせた。そこに書いてあるのはこの店についてのご意見……ではなく、月島くんの連絡先だろう。 [[→->アンケート用紙]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b003_m.jpg"> 私は、うんうんと頷いた。月島くんは笑って、私に差し出す。 詩由 「ありがとう……!!」 ようやく、ようやく月島くんの連絡先が入手できた……! 電話番号欄には、確かに番号が書いてある。携帯電話の番号じゃないから、家電かな? とりあえず入手できただけで大成功! 私は、なくさないうちに自分の携帯電話に、月島くんの連絡先を登録する。 ほらね! 先生に頼らなくても、本人から聞けるのよ! 信じてファミレスに来てよかった! [[→->一仕事終えて]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b001_l.jpg"> ふと顔を上げると、木野くんも友子ちゃんも食べ終わっていた。食べているのは、もはや大神くんだけだ。 詩由 「えーと……」 詩由 「めでたく月島くんの連絡先も手に入れたし、何か話そうか」 詩由 「大神くんは、ゆっくり食べててね」 詩由 「そういえば、ショートケーキどう? 美味しかった?」 [[→->ショートケーキの感想]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b001_m.jpg"> 木野くんはびくっとし、こくこくと頷いた。 しかし、こうもびくんびくんされると、なんかいじめてるみたいだな。もっと親しげに話せないかな……。 [[→->チョコレートケーキの感想]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b001_n.jpg"> 詩由 「友子ちゃんはどう? チョコケーキ」 友子 「うん、美味しかったよ」 友子 「……本当にいいのかな、ご馳走になっちゃって」 詩由 「いーのいーの」 詩由 「そう毎回は無理だけど、また来ようよ」 友子 「うん」 うーむ……。どう話せば、みんなと親しく話せるだろうか。 とりあえず食べたものについて触れてみたが、この様子では、みんなとわいわい話せる話題ではないようだ。 何なら話せるだろうか? よく会話に困ったら、天気、季節ネタが一番とは言うが……。 [[→->季節ネタを振る]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b001_o.jpg"> 詩由 「そういえば、ゴールデンウィークと言うと、こどもの日が真っ先に思い浮かぶよ」 詩由 「かしわもち美味しいよね~」 友子 「そうだね」 詩由 「男の子だと、こいのぼりとか五月人形とか飾るの?」 奏 「ツリーなら飾るよ」 詩由 「釣り?」 奏 「クリスマスツリー?」 詩由 「じゃあ、クリスマスには、月島くんの家でクリパしよ」 奏 「気が早いね」 クリスマス、か。 クリスマスは十二月。一年最後の月、しかも終わりの方のイベント。 その頃には冬休みにもなるんだろうけど、この卒業制作に関してはどう進んでいるのだろうか。 クリパなんて言ったけれど、実際クリスマスパーティーができるほど、仲良くなれるかな。 ……よし、目標は、“みんなで楽しくクリスマスパーティー”! クリスマスまで、まだ半年以上ある。それだけあれば、絶対仲良くなれるさ! 詩由 「クリスマスといえば~、やっぱローストチキンかな」 友子 「ほんと、気が早すぎると思うんだけど……」 詩由 「あはは、まだ夏にもなってないもんね」 詩由 「そうそう、冬休みの前は、夏休みがあるよね~」 詩由 「夏といえばバカンス! 海にでも行きたいね」 友子 「海、かぁ……」 詩由 「あ、海苦手? じゃあ、プールとか」 友子 「楽しそう……だけど、水着なんてないし……」 詩由 「じゃあ買いに行こうよ! 友子ちゃんはかわいい水着似合いそうだよねー」 友子 「うぅーん……」 詩由 「あるいは、レンタルとか?」 友子 「あんまりそういうのは、他人と共有したくないな……」 詩由 「月島くんや木野くんは、水着持ってる?」 [[→->水着]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b001_p.jpg"> 木野くんは、首を左右に振った。月島くんは、へらへらしている。 詩由 「じゃあ、みんなで水着買いに行くのもいいよねー」 [[→->水着と下着]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b001_q.jpg"> 奏 「水着と下着って、違いがわかんないよね」 詩由 「水に入る時に着るのが水着で、服の下に着用するのが下着だよ」 奏 「そうじゃなくて、見た目」 奏 「下着同然の格好を見せ合う……って、なかなか……」 詩由 「変なこと言わないでよ……」 [[→->下]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b001_r.jpg"> 奏 「スク水って、おちんちん目立つんだよね」 奏 「目立つってことは大きいし、目立たないってことは小さいし」 奏 「どっちにしろ恥ずかしいよね」 奏 「神光さんは、俺たちの股間チェックがしたいのかな?」 奏 「あるいは、男の子のおっぱいチェック?」 奏 「いやらしいなぁ……」 [[→->しない]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b001_s.jpg"> 詩由 「どっちもしません!」 詩由 「そもそも、目立たない水着だってあるでしょ」 奏 「雄っぱい」 詩由 「あーもー、女子の前でそう連呼しないの!」 この話題はある意味だめだな。 ふと大神くんを見ると、食べ終わっていた。 [[→->食べ終わり]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b001_t.jpg"> 詩由 「あ、大神くん食べたー?」 一 「ああ、うん、ごちそうさまでした」 詩由 「どう? ハンバーグ美味しかった?」 一 「うん」 詩由 「それはよかった! 大神くんハンバーグ好きなの?」 一 「まぁ、うん」 詩由 「なら、また食べにきたいねー、ランチとかで」 奏 「また神光さんのおごりなの?」 詩由 「おごりは勘弁してほしいな……」 詩由 「でもやっぱり、うちら学生だし、大神くんは一人暮らしでもあるんでしょ? なるべくお金はかからない方がいいよねぇ」 友子 「そうだね……」 詩由 「むしろ、行くたびにお金がもらえるといいんだけど……」 詩由 「大神くんのバイト先にみんな勤めちゃうとか」 [[→->提案]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b001_u.jpg"> 一 「来ないで……」 大変切実な表情で訴えられる。 詩由 「まぁそれは冗談だけど。私もまた、空いた時にはバイトしなきゃねー」 友子 「詩由ちゃんは、その日だけ働く……ってバイトいくつかやってたね」 詩由 「やっぱ遊びたいけど、そのためにはお金必要だし? 日雇いならその日だけ働けばいいから楽だよー」 友子 「そういうのって、仕事の内容決まってるの?」 詩由 「まぁ大抵イベントスタッフかな。ライブの警備員だったり、セミナーのイス並べたり」 詩由 「友達と一緒にもできるようなの多いし、みんなで行ってお金稼ぐのもいいかもね!」 奏 「何の集まり?」 言われてはっとする。そうでした。これは卒業制作を行うための集まりでございました。 詩由 「まぁでも、卒業制作にも、いくらかお金かかるっしょ。だったら、制作のために稼いでおくのも一つの案だよね」 [[→->お金]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b001_v.jpg"> 一 「お金。……かかるの?」 詩由 「…………やっぱしかかるんじゃ、ない?」 なんだか幾分か空気が重くなった気がする。話題を変えよう。 詩由 「ま、まぁとにかく、今は私自身実感湧いてないけど、進むうちに現実味帯びてきそうだよね」 詩由 「でも、学業はもちろん、遊びも大事だよ」 詩由 「またみんなで遊ぼうね!」 [[→->遊ぼう]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/b001_w.jpg"> し~ん。 詩由 「……遊びたく、ない?」 友子 「あ。いや、えっと……」 詩由 「友子ちゃんは?」 友子 「え!? あ、う、うん、そうだね……」 奏 「……まぁ、機会があればね」 うーむ、少しは仲良くなれたかなって思ったんだが……、早計だったか……。 [[→->時間が経ち]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/002_b.jpg"> お金を支払って外に出ると、友子ちゃんしかいなかった。 友子 「……みんな帰っちゃった」 友子ちゃんは、申し訳なさそうに言う。 私は、その背を叩いた。 詩由 「気にしない気にしない! また遊べばいいんだから!」 詩由 「月島くんの連絡先もゲットできたしね!」 私は、友子ちゃんと話しつつ、家路についた。 [[→->電話をかける]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/c001_b.jpg"> プルルルル…… ガチャ 『はい、こちら江向マナトです』 詩由 「あ、あのっ」 あれ? [[→->あれ?]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/c001_c.jpg"> 『えっと、今日、こっちはいい天気で……』 『だ、だから、全裸で散歩することにしたん、です……』 詩由 「えーっと……、月島くん……?」 『は、恥ずかしいし、誰かに見つかったらどうしようって考えて……』 詩由 「あの! もしもし?」 『そしたら、お、女の子の話し声が聞こえてきて……』 [[→->切る]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/c001_d.jpg"> 私は、電話を切った。そしてすぐさま、さっきかけた電話番号を検索してみる。 “キャラクターとえっちな電話をしよう!”というサイトが出てきた。 ここに掲載されている番号に電話をかけると、キャラクターがえっちな話を聞かせてくれるらしい。 その番号の一つは……、月島くんが書いていた電話番号だった。 詩由 「ちくしょおおおおお」 私は、まんまと騙されてしまった。 [[→->メッセージ]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/c001_g.jpg"> 詩由 「ええっ」 無情な男声アナウンス。私は、先生からもらった月島くんの電話番号が書かれた紙をもう一度手に取る。 詩由 「ええーと……!」 画面に表示された電話番号を読み上げつつ見比べるが、間違っていない。 先生が写し間違えたのだろうか? そんなぁ……。 とりあえず切るかと思っていたら、ケータイから何か聞こえる。 押し殺したような……、笑い声? 私ははっとしてケータイを再び耳に当て、怒鳴った。 [[→->怒鳴る]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/c001_h.jpg"> 詩由 「ちょっと!! 先生が間違えたと思って、今先生を呪うとこだったじゃん!!」 電話口から聞こえる、隠す気のない笑い声。 奏 『ちょっとした冗談じゃん~! っくく……、まさかこんなにあっさり騙されると思ってなかった』 月島くんだ。先生から教えてもらった番号は、間違っていなかった。疑ってごめん、先生。 [[→->呆れつつ]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/c001_i.jpg"> 詩由 「『この番号違うじゃん』って切っちゃってたらどーすんのよ……」 奏 『こっちからは神光さんの番号わかったし、気が向いたらかけてあげようかなーなんて』 詩由 「まぁ、こっちの番号知らせるためと、ちゃんと誰か出るか確認するためにかけたよーなもんだけど……」 電話で聞く月島くんの声は、機械を通しているせいで、少し変わって聞こえる。それでも調子は、全く同じだった。 詩由 「じゃあ、私が月島くんに電話かける時は、この番号でかけるからね」 奏 『はいはい~』 ……用件は済んだ。 しかし、せっかく電話をかけたわけだし、実質二人きりだろう。何か話してみようか。 月島くんのことだから、『暇?』と聞くと、暇でも『暇じゃない』って返してきそうだな。 じゃあ、いきなり世間話してみるか……。 [[→->世間話]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/c001_j.jpg"> 詩由 「これから同じグループのメンバーとしてよろしくね」 奏 『うん~』 詩由 「んーと……、今日、さ、みんなでファミレス行こうとは言ったけど、行けなくなっちゃったじゃん? せっかくゴールデンウィークあるし、大神くんは難しいかもしれないけど、みんなでどっか行きたいね」 奏 『神光さんおごってくれんの~?』 詩由 「お金がないなら、なるべくお金かからないとこで遊びましょう……」 奏 『例えば?』 詩由 「………………図書館とか?」 奏 『図書館って遊ぶとこなん?』 遊ぶとこではないか。館内ではお静かにだから、おしゃべりもできないし。 詩由 「月島くんは……、どこ行きたい?」 『月島くんはどっか行きたいとこある?』と聞きそうになったのを、すんでのところで呑み込んだ。YesかNoかで答えられるものでは、嘘をつかれやすいし、また話もふくらまないからだ。 月島くんは、『ん~』と、少し悩む声を上げた。 奏 『面白そうならついてくし、面白くなさそうならついてかないから、神光さんたちが決めればいいんじゃない』 詩由 「なにそれ……」 私と月島くん以外の、うちのグループメンバーを思い浮かべる。大神くんは、バイトと言っていたし、会えないかもしれないな。 友子ちゃんは……、ウィンドウショッピングが好きだったな。何を買うわけでもなく、雑貨屋さんを見たり、本屋さんを覗いたり。 思えば、友子ちゃんと、カラオケやボウリングに行ったことはなかったな。あんまり騒がしい場所は好きではなさそうだ。 木野くんも、おとなしい子だし、騒がしい場所は好きじゃないかな……。かと言って男の子だし、ショッピングは退屈だよね……。 おとなしい男の子でも楽しめそうな場所…………。 ………………図書館が頭から離れない…………。 詩由 「ねーねー、男の子って、どこ行ったら喜ぶ?」 奏 『ラブホ?』 詩由 「……友人と」 奏 『ラブホでいいんじゃない?』 詩由 「あんたは、木野くんと二人でラブホに行ったら楽しいの?」 奏 『たのしいかもね?』 奏 『男同士、めくるめく官能の世界への扉を開いて……』 奏 『あっー……♡』 奏 『興奮した? 神光さんて腐女子なんだね』 詩由 「一人で勝手に話を進めないでください!」 奏 『僕はね、普通の異性愛者だよ』 …………嘘、か? [[→->嘘?]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/c001_k.jpg"> 奏 『…………なに考え込んでんの』 ついつい黙っていたら、月島くんが吹き出した。 奏 『言ったでしょ? 最初から好感度MAXだって』 奏 『神光さんが、木野くん掘ってこいって言うなら、しょうがないけどしてあげようか』 詩由 「って、こんな話がしたいんじゃないの!」 奏 『あははっ。神光さんって面白いよね』 月島くんは、本当に楽しそうに笑う。嘘をつかれているかどうかより、からかわれている気がしてきた。 詩由 「もういい、本人に聞くし」 奏 『えっ、木野くんのアナル事情を……?』 詩由 「ちがーう! みんなで遊びに行く場所について!」 奏 『……ふ~ん』 詩由 「また決まったら連絡するね」 奏 『…………ん~、わかった』 詩由 「卒業制作についても考えといてよ!」 奏 『は~いはい』 詩由 「じゃあまたね。おやすみなさい」 奏 『はいは~い、おやすみなさ~い』 奏 『いい夢みてね』 詩由 「……月島くんもね」 通話を終了する。 [[→->通話終了]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/c001_r.jpg"> 数分後、返事が返ってきた。 “神光さんはみんなからの人望も厚いし、しっかりしているし、大丈夫じゃないかな。 それでも、俺にできることなら、俺も精一杯頑張るね” 詩由 「おおう……」 いきなり褒められた。不意打ちに赤くなる。 社交辞令なんかじゃ……、ないよね? そもそも木野くんって、しゃべったことこそないけど、社交辞令言うようなタイプには思えないし。返す言葉に悩んだなら、私の言葉にはスルーすると思うし。 じゃあ、木野くんは、私のこと、そう考えてくれているのか……。 詩由 「いい子だなぁおい……!」 でへへ、と、一人ベッドの上で照れる。 詩由 「…………」 もう少しメールしていたい気持ちはあるけれど、時間も時間だし、切り上げた方がいいだろうか。この分だと、メールする限り、木野くんも眠れないってことになるよね? どうしようかな……。 [[メールを送っちゃう]] [[メールを送らない]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/c001_t.jpg"> 詩由 「はっ!?」 と、送って気づく。 今のメッセージ、すごく恋愛っぽくはしないか? 意識しているとか思われないか? 変な風に受け取られたらどうしよう……。 悶々としていると、返信が届いた。 [[→->相手の返事]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/c001_u.jpg"> “そうだね、俺ももっと話さないと… メールだと不思議と話しやすいね。何でも話してしまいそうだ” 詩由 「…………脈あり?」 嫌がられたり、スルーされたりな返事ではない。それどころか、“メールでなら何でも話せそうだ”と言っている。 じゃあ、何でも話していいよ! いやむしろ話して! そう言いたいのはやまやまだが……。 時計を見ると、十一時近く。いくらお互い明日が休みと言えど、そろそろ寝なくては。 “ほんと? いいよいいよ、何でも話してね! でも遅くまで起きさせるのも悪いし、今日はそろそろ寝ようか?” “そうだね、もうこんな時間だし。 今日はありがとう、神光さん。おやすみなさい” “こちらこそありがとう!” 私は少し考えて……、つけ加える。 [[→->また明日]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/c001_v.jpg"> “また明日ね! おやすみ~(´つ∀-)。O.゚。*Zzz” また明日。 詩由 「また明日ね……」 [[→->メールを送らない]]
<img src="../../image/lonecrywolf/short/c002_b.jpg"> 待ってろ! 月島くん、木野くん、大神くん! END [[作者コメント]] ※最初のページから飛べる作者コメントと同様です。
この物語は、“一匹狼少年プロジェクト”における、ちょっとしたゲームブックです。 !この物語は、18禁ではありません。ただし、ちょっと下品な表現を含みます。 !フラグ(変数)は存在していませんので、攻略する要素というものはないに等しいです。 以下は、画面左の軽い説明です。 [[読まなくても問題ない方は、ここをクリックしてストーリーにお進みください。->001_はじまり]] ・SAVES クリックすると、セーブ画面が出てきます。 番号の隣のSaveボタンを押せば、セーブができます。一度セーブすると、SaveボタンはLoadボタンに切り替わり、Loadボタンを押せばセーブデータをロードすることができます。 上書き保存はできません。セーブデータを消したい時は、Deleteボタンを押してください。 下記にあるDiskと書いてあるものは、上級者向けとでもお考えください。(気にしなくても問題ありません) ・RESTART いわゆる“はじめから”です。押すと、確認画面が出ます。はじめから読みたい場合、OKを押してください。 なお、セーブデータには影響がありません。 ・lonecrywolfの上にある“<”マーク 押すと、セーブやリスタートの部分が隠れ、ストーリー画面が広がります。基本的に押しておくといいと思います。 隠れたら“>”に切り替わります。“>”を押せば、隠れていた部分が戻ります。 ・lonecrywolfの上にある“←”マーク “戻る”です。 ※ブラウザの戻るボタンは機能しません。もしブラウザの戻るを押した場合、ページ自体が、URLをクリックする前のページに戻ってしまいます。 ・lonecrywolfの上にある“→”マーク “進む”です。 “←”(戻る)を押さないと、“→”(進む)ボタンは選択できません。 ★ページを進む時は、ページ下部にある“→”か、選択肢を選び進んでください。 [[ストーリーに進む場合、こちらをクリックしてください。->001_はじまり]] あるいは、作者コメントから読みますか? ※ストーリーのネタバレはないので、最初に読んでも問題ありません。 [[作者コメント]]
<a href="https://fantia.jp/fanclubs/6093" target="_blank">Fantia</a>にて、支援ポイントが1000PT達成したら、“一匹狼少年小話ゲームを作る”というお約束をしていました。 2018年に、このお約束を発表したでしょうか。それからずっと支援ポイントは集まらず、私自身このお約束のことをすっかり忘れておりました。 しかし、2020年5月にファンクラブに入会してくださったある方のおかげで、気づけば1000PTどころか5000PT達成しておりました。当時はばたばたしていて非常に忙しく、ゲームを作るというお約束があったこと、ポイントを達成していたことに気づいたのが、2021年になったお正月でした。その節は誠に申し訳ありませんでした……。 さて、“一匹狼少年小話ゲームを作る”。 当然、当時はノベルゲームを想定しておりましたが。 思えばもう2018年は3年前。さすがに私の取り巻く環境も変わっていました。 初めてノベルゲームを発表したのが、“初恋スコーチング”(18禁)。2017年の終わり頃に発表しました。その時は、他のゲームもばりばりノベルゲームエンジンを使って……と考えていたわけです。 しかし、利用しているゲームエンジンに不満が爆発。他のゲームエンジンをと思っても、昔と違って、今は選択肢が非常に少なくなっています。 某RPG作れる有名なフリーソフトに触れました。はっきり言ってすごいし、長年愛され続けるだけある。使っていたゲームエンジンに対する不満は、このおかげで0に等しくなりました。 ――しかし。 それはRPG作る用なので、ノベル用にはできていません。それでも、頑張ればノベルゲームは作れます。解説しているサイトさんを見ながら作っていたのですが、ふ……と、感じたのです。 『これではどんなに頑張っても、理想のゲームは作れない』 しかしながら、不満が爆発したゲームエンジンに戻るのも癪です。そこで私は、無謀にも思いました。 ゲ ー ム エ ン ジ ン を 私 が 作 れ ば 解 決 ! と、いうわけで、2020年、仕事に忙殺される中で私は、既存のゲームエンジンに頼ることをやめ、“ゲームエンジンを作る勉強をしよう”と思い始めたところでした。 そうなると、『“一匹狼少年小話ゲーム”って何で作ればいいの?』という話になる。 RPG作る用のソフトで作っていたノベルゲームの枠組みは、完全に作りかけです。かと言って、ぶつぶつ文句を言いながらノベルゲームエンジンを使うのも、そのエンジンに失礼ですよね。かつ、おそらく2020年前半に1000PT達成していて、気づいたのが2021年正月。これ以上無駄に待たせないようにしなければいけない。そのためには、無知でも手軽に作れる何か……。 そして辿り着いたのが、この<a href="https://twinery.org/" target="_blank">Twine</a>でした。 海外製なのと、日本語の解説サイトも乏しいため詳しいことは未だ私もわからないのですが、かなり高性能な、ゲームブックが作れるフリーソフトです。 別にゲームブック用ではないようですが。ゲームブックが作れます。 ゲームブックというのは、この選択肢を選ぶなら2ページ目へ、この選択肢を選ぶなら3ページ目へ……といった、1冊の本を最初から最後まで読むのではなく、分岐によってページを選んで読むものですね。私の説明がわかりにくければ、“ゲームブック”で調べて、何かしら実際に体験してみるといいと思います。 ノベルゲームとは若干違う気がしますが、ゲームブックはゲームの一種なのでよしとしましょう! 音ないけど、よしとしましょう! 無論、今後もこのゲームブック形式で作品を出すわけではありません。 ゲームエンジンを作ったら、そっちに今までの作品(これ含めて)移すつもりでいます。 『結局何がやりたいの?』と言われそうですが……。私は今も昔も、“自分の理想のゲームを作る”のが目標です。 私は、作品も活動も、あれもこれも方向性が違っていて、戸惑う方も多いと思います。 それでも、それら一つ一つパズルのピースになっていて、いずれ一つの集大成にできればと考えております。 全部に興味は持てなくても、何かちょこっと興味を抱くものがあれば、たまに私の様子を伺ってもらえればと思います。 このストーリーを完成するにあたって、応援してくださった皆様、誠にありがとうございました! 次やるべきことは“一匹狼少年”とは少しずれるかもしれませんが、やがて必ず繋がっていきますので、よろしければ引き続き、気が向いた時にでも様子を見てみてくださいませ。 ここまでお読みくださり、ありがとうございました。 2021/08/22 無記名アノニム [[ストーリーを読む->001_はじまり]] [[最初のページに戻る->はじめに]] [[振り返ってみる]]
(2021/11/24追加) 今回のこれを作るにあたって、細かく振り返ってみます。 本当はどこかのウェブページで振り返るつもりでしたが、面倒くさいのでここで……。 <img src="../../image/lonecrywolf/short/001.jpg" width="50%"> 先生の外見や性格悩みました。 普通に普通に……という結果、上のような外見になりました。 実際には変わる可能性が大いにあります。 <img src="../../image/lonecrywolf/short/007_a.jpg" width="50%"> 線のせいで調和してなくてすみません。 スマホは図形ツールで作ったからね……。 <img src="../../image/lonecrywolf/short/005_h.jpg" width="50%"> めんどくさかった絵その1。 差分地獄である。 そして、ほぼデッサン狂ってる。 瞳を動かせば新しく描かなくてもいいんじゃね!?←愚かでした。2Dでへたくそがやると不自然だね>< <img src="../../image/lonecrywolf/short/008.jpg" width="50%"> 今回は基本的にデザインドールに頼りましたが、この手の表情は頼れなかったので自分の左手見ながら描きました。 画像見ればわかる通り、どっちも右手使ってますね。後で反転させました。 一番うまく描けた気がしますねヾ(*´∀`*)ノ やっぱり血の流れている本物には敵わないね……。 <img src="../../image/lonecrywolf/short/009_a.jpg" width="50%"> なんかおかしいなとずっと思ってたんですが、スマホが本当にただの色のついた板になってるからですね。 内カメラしかないスマホはそりゃおかしいわ。 なお、主人公でも同じ失敗をしている模様。 <img src="../../image/lonecrywolf/short/010_b.jpg" width="50%"> 一番好きな顔。 クールな子の表情を崩すのが生きがいです。 <img src="../../image/lonecrywolf/short/012.jpg" width="50%"> この頃塗り方なんかをかなり模索していたため、かなーりばらばらです。 この絵なんかひどいですね。違う人塗ってんのかレベル。 一応色はキャラごとに固定させたんですけどね。 <img src="../../image/lonecrywolf/short/a001_a.jpg" width="50%"> 今のところ主要キャラ全員黒髪なので、モブは茶髪にしてみました。 <img src="../../image/lonecrywolf/short/b001_g.jpg" width="50%"> めんどくさかった絵その2。 こちらの方がより差分地獄である。飲食物も描いたしね。 ちなみに、右が飲んでるのはメロンソーダだけど、真ん中が飲んでるのは麦茶かウーロン茶かそんなとこ。意外と無難な飲み物。 <img src="../../image/lonecrywolf/short/b004_b.jpg" width="50%"> なかなか美味しそうに描けました(自画自賛) スポンジの具合がよくできました。 ショートケーキやハンバーグも、一度この大きさで描いてから配置しています。 ショートケーキもハンバーグも美味しそうに描けました(自画自賛) <img src="../../image/lonecrywolf/short/b001_r.jpg" width="50%"> サービスシーンのつもりで描いたんですが、うまく描けませんでしたごめんなさい。 服を脱がすとはだかが出てくるって、よくよく考えるとすごくえっちだと思うんです変態でごめんなさい。 食べ物を描くの楽しいです(ノ*´▽`*)ノ 参考写真そのものじゃいけないので、アレンジしていくのがなかなか……。 手と食べ物描くのが上手な人は絵も上手い。私も頑張っていきます。 [[最初のページに戻る->はじめに]]